貝類 栄養

貝類は栄養の宝庫


四方を海に囲まれた島国の日本で、貝類が貴重な栄養源として古くから食べられていたことは、「貝塚」などの史跡からも見て取ることができます。貝類は動物性食品の中では低脂肪で、タンパク質やビタミン、ミネラルなどの栄養素が豊富。旨味成分をたっぷりと含み良質な出汁も取れるため、味が良いだけでなく健康や美容にも非常に効果の高い食材です。


現代人に不足しがちな亜鉛が豊富


通常の食生活を心がけていれば不足することはないと言われる亜鉛ですが、近年、食生活の乱れや無理なダイエットなどによって男女ともに摂取推奨量を下回っているという指摘がされています。

亜鉛は成人の体内に約2000mgほど存在し、主に骨や眼球、肝臓、筋肉、腎臓、前立腺脾臓などにある成分です。人間の体に必要とされている必須ミネラル16種のひとつですが、体内で生成することができないため、食事から摂取する必要があります。タンパク質やホルモンの合成などに関わる酵素の材料として使われ、不足すると味覚障害や皮膚炎、免疫機能の低下、生殖機能の低下など様々な症状を引き起こしてしまいます。亜鉛は汗とともに体外へ出てしまう性質を持つので、スポーツなどで汗をかく機会が多いという方も、体内で不足しないよう心がけましょう。

亜鉛を多く含む身近な食品として、豚レバー6.9mg、牛肩肉5.0mg、牛ひき肉4.3mg、卵黄4.2mg(100gあたり)などが挙げられますが、牡蠣にはなんと13.2mgもの亜鉛が含まれています。夏の産卵期を控えた「春牡蠣」は、旨味成分であるグリコーゲンやアミノ酸の蓄積量が最大になり、ぷっくりと太った濃厚でクリーミーな味わいを楽しむことができます。牡蠣の他にも帆立貝やシジミなど、貝類は他の食材に比べ亜鉛が多く含まれるので、積極的にいただきましょう!

亜鉛は水溶性なので、加熱調理する際は鍋物やスープなど汁ごと食べられるお料理が適しています。またビタミンCと同時に摂取すると吸収が良くなる性質を持つので、仕上げにレモンやかぼすなどの柑橘類をギュッと絞るなどの工夫をすると、栄養もしっかり、しかもおいしくいただけます。


ビタミンB12タウリンなどの栄養素も豊富


ビタミンB12は赤血球を作り血液を増やしたり、神経機能の維持のために必要な栄養素です。

主に動物性食品に含まれ、植物性食品には含まれないため、肉や魚を避けた極端なダイエットなどをしていると不足してしまう可能性があります。ビタミンB12が不足すると、造血作用が低下して血液量が減ってしまうため、悪性貧血によるめまいや慢性的なだるさなどが起こったり、神経の働きが低下して、肩こりや腰痛、手足のしびれ、集中力の低下、うつ病などの原因にもなってしまいます。

ビタミンB12を多く含む身近な食品として、牛レバー52.8μg、鶏レバー44.4μg、豚レバー25.2μg(100gあたり)などのレバー類が挙げられますが、それ以上に、しじみ62.4μg、赤貝59.2μg、あさり52.4μg、ホッキ貝47.5μg、はまぐりの佃煮45.5μg、と貝類のビタミンB12含有量がとくに多いのが特徴的です。


近年、肝機能をサポートしてくれる成分として、アミノ酸の一種であるタウリンやオルニチンが話題になっていますが、貝類はこれらの成分も豊富に含んでいます。とくにシジミに含まれるオルニチンの効果は、江戸時代の頃から「蜆(しじみ)売り 黄色なつらへ 高く売り」と川柳に詠われるほど。当時から、シジミにはお酒の飲み過ぎによる体調不良を改善する働きがあるらしいぞ、という理解が経験則からあったようです。